絵は一筆描きで
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アメリカのティーン向け少女漫画家、ミサコ・ロックス(本名・高嶋美沙子)が、9月16日、漫画単行本3巻シリーズの第1巻「ディテクティブ・ジャメイン」(ヘンリー・ホルト社刊)を出版した。バーンズ&ノーブルや、アマゾン・ドットコムなど、全米の書店、オンラインストアで発売中だ。
今月27日、ジェイコブ・ジャビッツセンターで行われる「NYアニメフェスト」では、夕方5時半から講演会、6時半からサイン会を行う。
この作品は、とあるアメリカの高校が舞台。おちゃめでしっかり者の女子高校生ジャメインが、キュートな男友達アンディーとトラビスを従えて、キャンパスの事件を捜査・解決するという、学園探偵もの。
うつ病の薬でも飲んでいるかのように、ぼーっとした生徒や先生が増えていることに疑問を抱く主人公ジャメイン。そんなおり、交通事故でジャメインの部活動の顧問が死亡する…。殺人事件あり、スキャンダルあり、恋の三角関係ありと、ジャメインが大活躍する。
絵のタッチはいかにも日本の少女漫画のかわいさで、せりふは英語。
「アメリカには、スパイダーマンとかスーパーマンとか、男の子向けのヒーロー漫画はありましたが、女の子を主人公にしたものはなかったので、その分野を開拓したかった。日本にもアメリカにもなかった、新しい少女漫画です」。
主人公や登場人物には、それぞれ親しいアメリカ人の友人をモデルにしている。ジャメインの両親が私立探偵という設定は、実はロックス自身の家庭を少しツイストしたものだ。
「両親と兄が警察官なんです。父は麻薬捜査官で、母は青少年犯罪を手がけています。両親の希望は、私が国際捜査官かなんかになることだったと思いますよ」と笑う。
「日本では、漫画家には何人もアシスタントがつくと聞きますが、私はストーリー作り、台本書きから仕上げまで、全部一人でやります」。絵は一筆描きで、色は全部コンピューターでつけるという。
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埼玉県出身。12歳の時に、映画「バック・トゥー・ザ・フューチャー」を見て、マイケル・J・フォックスに一目ぼれ。「いつかアメリカに行って、マイケルのような素敵なボーイフレンドを作る」ことを夢見て、奨学金留学制度があった法政大学英文科に進学した。在学中に、ミズーリ州カークスビル大学に2年間の留学の夢を果たす。
一度日本に戻り大学を卒業すると、人形師を目指してニューヨークへ。01年、市内の人形劇場ボンドストリートシアターで、インターンの仕事にありつくが挫折。
その後、大恋愛の末に国際結婚をするがこれもうまくいかず、行き詰っている時に描き始めたのが少女漫画だ。
離婚すると「起死回生で、ニューヨークの出版社6社に漫画企画をプレゼンテーションしました。ディズニー配給会社のハイぺリオン社が興味を示してくれて、処女作出版にこぎつけたんです」と話す。
処女作は06年同社から出した「バイカー・ガール」。2作目「ロックンロール・ラブ」では、自身の初恋と留学時代をつづった。今回の「ディテクティブ・ジャメイン」シリーズは3作目となる。
イギリスの著名作家、デービッド・フィックリンの週刊キッズマガジン「DFC」にも連載が決まったばかり。
ニューヨーク市の各公立図書館では、中高校生向けの漫画ワークショップを行うほか、全米とヨーロッパ各地では講演をして回るという売れっ子だ。来年春からは、非営利団体ニューヨーク・デ・ボランティア(日野紀子代表)とのコラボレーションで、市の公立学校の生徒たち向けアフタースクールプログラムで、漫画のワークショップを開催する予定だ。
www.misakorocks.com
(ささききん)
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