そして、文末は「I now begin the journey that will lead me into the sunset of my life……Thank you, my friends. May God always bless you. Sincerely」と結んでいた。「私は今、私の人生を黄昏に導く旅を始めます」――簡潔にして美しいセンテンスであった。
就任から69日後の3月30日には、首都ワシントンのヒルトンホテルで開かれたAFL・CIO(アメリカ労働総同盟・産別会議)総会での演説を終えて出てきたところを狙撃された。胸に銃弾を浴びて担ぎ込まれた病院で、銃弾の摘出手術に集まった医師団に、笑顔で「キミたち皆が共和党員だと良いがね」と軽口を叩き、医師団も「大統領、今日だけは全員共和党です」と応じる一幕があった。弾丸は心臓をかすめて肺の奥深くに止まっていたが手術は成功、手術直後の大統領を見舞った妻にも「Honey, I forgot to duck =避けるのを忘れたよ」と、26年にヘビー級ボクシング王者ジャック・デンプシーがジーン・タニーとのタイトル戦で予想外の敗北を喫した後、妻にこぼした言い訳とされる言葉を使って周囲を安心させた。