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 よみタイムについて
   
よみタイムVol.81 2008年1月25日号掲載

酒蔵シェフ 鈴木秋信さん

10歳で「料理人生」決める
酒に合った懐石料理を

 ニューヨークの日本食レストランで最も多くの日本酒を扱う店として、米国人にも高い評価を受けている。入り口には酒樽が積み重ねられ、カウンター越しにも、日本各地の地酒が並べられている。樽を形どったトイレは圧巻だ。
 もともと、酒バーにつまみを少々揃えた、つまり「酒を売り」にした店としてオープンしたが、ここ数年は「本格的な日本食レストランの味」と人気だ。
 キッチンをあずかって3年になる。朝、10時前に店に出ると、ルーズベルトアイランドのアパートに帰るのは、深夜を大きく過ぎる。
 「こんな生活をもう、四半世紀もやってますからどうってことないですよ」と笑い飛ばす。
 静岡県磐田市で67年に生まれる。実家は日本茶を販売しており、裕福な家庭で育った。10歳を過ぎたころから「将来は板前になりたい」と心に強く感じていた。
 小学生の時、母親を亡くし男3人兄弟の真ん中だったが、毎日のように母親に代わって炊事をするようになった。
 「ちっともイヤにならないんです。毎日、何を作ろうか考えただけで楽しくなるんです」。地元の中学校を卒業すると、父親の仕事の関係で、東京・銀座の老舗割烹「おぐら」に修行した。
 「高校に行こうとは思わなかったですね。どっちみち板前になるのだから早い方がいいと思って」という。
 ここで10年間、たっぷりと板前としてのノウハウを学んだ。店2階の大広間に、仕事仲間5人と住み込んで、寝泊まりする。早朝の河岸には、新人は行かせてもらえない。このため、朝は9時ごろ店に行き、掃除して、店の開店準備に追われる。店が閉まり、後片付けして、布団の中に入るのは、夜中の2、3時になったという。
 最初の2年は「皿洗いと刻みもの」が主な仕事。なかなか、煮物、焼き物などの料理は作らせてもらえない。「先輩の作るのを見て覚えるしかなかったですね」と振り返る。
 そんな生活の中、一番の楽しみは、深夜の銭湯に行くことだった。銀座に唯一あった銭湯は夜中の12時で閉まるため、皿洗いなど後片付けの仕事を一時中断して、仕事仲間と行く。「銀座の中心街を歩くのが良かったですね。きれいな格好をしたお姉さんがたくさんいて」と懐かしむ。
 仕事で辛いとか、辞めたいと思ったことはなかったが、中学生時代の友人とあって話をするのが一番堪えたそうだ。テレビや映画を観る時間もない。ゲーム機器で遊んだこともない。だから「話題についていけなんです。みんなが楽しそうに話しているのを聞いているだけでした」。
   ◇
 10年間という区切りもあって「おぐら」を辞めた。「この店で十分教わった」からだ。そのころ実千代夫人と結婚した。心機一転と思っていたら、ニューヨークにある日本の食器を扱っている業者から「稲菊という店が職人を募集している」という話しを聞いた。
 「ニューヨークか」。一度、行ってみたかった。「井の中の蛙じゃないですけど、日本という枠の中で縛られたくなかったんです。滅多に無い機会だから」と96年の秋、夫婦そろってあこがれのニューヨークに。
 「稲菊」といえば、世界に名だたる「ウォルドルフ・アストリアホテル」の中にある高級日本食レストラン。顧客も皇室関係から、政治家、ビジネスマン、文化人、スポーツ選手と幅が広い。「おぐら」で培った腕を、世界中の人に披露するには最高の舞台だった。
 数人いるシェフのひとりだったが、チーフシェフにかわいがられた。
 「アメリカの素材でいかに日本的なものを出していくかなど、本当に良く教えてもらいました」と「ニューヨークの親方」に感謝の念を忘れない。わずか1年で永住権もとれた。「仕事も思う存分やらせてもらえた。ニューヨークに来たおかげで、逆に日本の良さも見えました」と4年間の稲菊時代を振り返る。
 「多くのレストランを見てみたい」とこの後、「おいかわ」「初花」で働いた。
 「酒蔵」には3年前に入った。オーナーの八木秀峰氏から「全てまかせる。好きなようにやってくれ」といわれた。
 目指すは納得のいく「懐石料理」。日本酒の種類によって、その酒にあった料理を出していく。まだ、食器や材料など揃わないものがあるが、近いうち「鈴木秋信の懐石料理を皆さんに味わってもらいたいですね」と自信たっぷりに話した。
(吉澤信政記者)
酒蔵
211 East 43rd Street, B1
Tel: 212-953-7253
ランチ
11:30am〜2:20pm (月〜金)
ディナー
6:00pm〜11:45am (月〜木)
6:00pm〜12:45am (金・土)
6:00pm〜10:45pm (日)