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Vol.215:2013年10月4日号
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 よみタイムについて
河野洋: 名古屋市生まれ。12歳でロックに目覚め、ギター、バンド活動を始める。89年米国横断、欧州縦断のひとり旅の後、92年NYに移住。03年ソロアルバムのリリースと同時にレコード会社、Mar Creation, Inc.を設立。現在は会社では、アーティストマネジメント、PR、音楽、映像制作などエンターテイメントに関連するサービスを提供するかたわら、「NY Japan CineFest」「j-Summit New York」などのイベントをプロデュース。その他にも、エイズ、3.11震災後の日本復興に関わるチャリティイベントや、平和、社会、環境問題などをテーマにしたプロジェクトにも積極的に取組んでいる。
ウェブサイト : www.marcreation.com / メール: contact@marcreation.com
「オンガク喫茶」のこぼれ話はブログ「ゼロからのレコードレーベル」

よみタイムVol.215 2013年10月4日発行号

プログレ界の新星
District 97
魂揺るがすパフォーマンス



©District 97

 プログレッシブ・ロック(以下プログレ)は英国で生まれ、60年代中後期から急速に進化を遂げた。プログレに馴染みのない人も、この一派であるピンク・フロイド、イエス、エマーソン・レイク&パーマー、ジェネシスらの名前はどこかで聞いたことがあると思う。
 1969年に発表されたキング・クリムゾンの名曲「21世紀の精神異常者」は、ジャズとロックを見事に融合化するだけでなく、混沌とした未来の世界を予期したサウンドとアレンジでプログレ界に金字塔を打ち立て、後続のバンドにも多大なる影響を与えた。
 しかし、70年になると音楽ジャンルはさらに細分化し、ハードロック、パンク、ニューウェーブ、テクノと次々と出現する音楽に「進化」の代名詞を奪い取られ、プログレは音楽シーンから隅へ追いやられていってしまった。
 しかし、時代は巡る。そんなプログレ界にも一筋の光が射し込んできた。それが、2006年シカゴで結成されたディストリクト97(以下D97)だ。

 バンド名は、ジョナサン・シャング(ドラム)、ロブ・クリアフィールド(キーボード)、パトリック・モルケーヒー(ベース)の3人が通っていた学区名から取られたと言う。後に加わったジム・タシジャン(ギター)も大学で彼らと知り合っており、D97はいわば同級生による仲良しバンド。写真を見ても実に初々しい。
 2007年になると、バンドに更に新しい血が注ぎ込まれる。それが同年アメリカン・アイドルのセミファイナルまで勝ち進んだ紅一点のレスリー・ハント(ボーカル)である。プログレ全盛期には未だ生まれてもいなかったレスリーは言う。
 「D97の特徴は、70年代のプログレに忠実でありながらも、何か新しいエッセンスを織り込んでいることだと思うわ。私自身、プログレの女性ボーカルを聞いたことが余りないし、それも新鮮じゃないかしら? ポップなメロディーがプログレにミックスされた感じね」
 バンドの発起人であるジョナサンの楽曲が中心に収められた「ハイブリッド・チャイルド」(2010年)は、プログレの洗礼を受けた新生児の如く、変拍子、巧妙なメロディーライン、ロック且つクラシカルなアプローチでまとめられている。しかし、セカンドアルバム「トラブル・ウィズ・マシンズ」(2012年)になると、他のメンバーの楽曲が増え、サウンド面も含め幅が出て来た感じだ。
 「セカンドアルバムはデビューアルバムより、様々な面においてコラボレーションの色合いが強くなってる。ジョナサンのプロジェクトとしてスタートしたバンドだけど、メンバー同士が刺激を与え合って皆で作り上げたサウンドになっていると思うわ」
 このアルバムでは、プログレの大先輩、ジョン・ウェットン(キング・クリムゾン)が参加しているが、現在も活動するプログレ・バンド、また彼らのオーディエンスは年配の人がほとんど。
 「当たり前かもしれないけど、正直、お客さんの多くは私たちより年上ばかり。でも彼らが子供たちを連れてくることだってあるし、私たちの音楽は若い人たちにも充分アピールしていると思う。それと、私たちは20代後半から30代前半なのだけど、ティーンエイジャーに見えちゃうから、実際の年齢差以上に若く見られるのよ」と笑うレスリー。

 そんな彼らが10月15日に、なんとジョン・ウェットンをゲストに迎え、ニューヨークのイリディアムで公演を行う。
 「私たちの音楽は、初めて聴いた時はピンと来ないかもしれないけど、ぜひライブに来て欲しいの。過熱モードで魂を揺るがすパフォーマンスをお見せするわ。アルバムでは体験できないエネルギッシュなショーになりそうよ」とライブインジャパンの実現も含め、日本人にラブコールをくれた。
 21世紀の精神異常者、それがレスリー・ハントのような魅力溢れる若手の女性ボーカリストだったとしたら、プログレの進化はまだこれからだと言えるだろう。
 それを確かめるためにも、ディストリクト97を是非見てほしい。
(河野洋)

District 97
Featuring Special Guest John Wetton and the Music of King Crimson
■10月15日(火)8:00pm / 10:00pm
■会場:Iridium 1650 Broadway(51st St.)
■$30 (加えて店内でミニマムオーダー$15)
■予約:Tel 212-582-2121
theiridium.com