荒涼たる風景を背に、メトロポリスに向かったシンガーソングライター、デブ・オー。韓国人の両親を持ち、アラスカで生まれた彼女は現在ニューヨーク市ブルックリンを拠点に6人の騎士(the Cavaliers)を先導する。
東と西、同じ米国でも環境はかなり異なるが、この2面性を知り、保つことが彼女の作曲面での成長の大きな鍵を握る。
「どちらも私の創作に同等の影響力があります。幼少期をアラスカで過ごし、それから、ニューヨークで育ちましたが、極端に異なるこの2つの街を往来することは、私の精神安定剤になってくれています」
「限りない才能の群れの中で生活するのは夢のようなことです。自分の音楽を聞いてもらうことすら容易なことではありませんが、でもニューヨークが大好きなのです。いつも私に刺激を与えてくれる。ライブ会場へ楽器を引きずって地下鉄で移動するのは不便ですけどね(笑)」と大都市の生活について語るデブ・オー。
彼女の音楽はソウルに溢れ、地に足がついたアレンジで、リスナーを心地よく包込む。眠らない都会の生活に疲れ、ひとりたたずみ望郷する。そんな時に聞きたくなる音楽かもしれない。
メンバーはドラム、ベース、ギター、ヴァイオリン、チェロ、コーラス、そしてデブ・オーの7人編成。
「元々ソロ・アーティストとして活動を始めましたが、率直に言って、才能あふれるミュージシャンたちと一緒に演奏する歓びは言葉にできません。バンドの持つエネルギーは私にとって本当に特別なもので中毒性すらあります」
このグループには他のバンドと一線を画する部分がある。それは音楽ビデオである。2013年、ブルックリンで毎年開催されるバンド・バトルで優勝した彼らは、その特典として、無償で音楽ビデオの制作が許された。
ビデオ「Vessels」は、湖でボートに乗りたたずむ男女が、雨に打たれながら、仲間たちに引き上げられ、ハンマーで打ち砕かれたピアノは、過去の心の痛みを打ち消すかの様に、時間を逆行しスローモーションで元通りになっていく。
「何よりもまず、音楽ビデオは曲だけでは伝わらない部分を、映像で補うことができる強力なパワーを秘めています。インディーズ・バンドにとって、音楽ビデオはバンドのヴィジョンやビジュアル性を打ち出す最適な方法と言えるでしょう。それはマーケティングの大きな助けとなるのです」と映像の魅力を語る。
今後のバンドの予定は、新曲の録音、そして新しいビデオ制作、春にはツアーにも出て新しいファンを開拓していくことだ。
「ニューヨークで音楽活動できることはラッキーだと思いますが、この音楽業界にいると、時折アジア系アメリ人として、見えない壁を感じることがあります。私は何よりもソングライターですが、最終的には、その壁を打破できることを願っています」
アメリカのエンターテイメントの世界でアジア人が正当に評価されるには、未だ時間がかかるかもしれない。しかし、デブ・オーのようなアーティストが、きっとアジア系アメリカ人の未来を担っていってくれることだろう。
(河野洋)
Deb Oh & the Cavaliers
■2月28日(金)8:00pm
■会場:Rockwood Music Hall - Stage 2
196 Allen St. Tel: 212-477-4155
■カバーチャージ無し(入場21歳以上/写真ID要)
■www.rockwoodmusichall.com
■debohandthecavaliers.com |