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Vol.232:2014年6月20日号
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 よみタイムについて
河野洋: 名古屋市生まれ。12歳でロックに目覚め、ギター、バンド活動を始める。89年米国横断、欧州縦断のひとり旅の後、92年NYに移住。03年ソロアルバムのリリースと同時にレコード会社、Mar Creation, Inc.を設立。現在は会社では、アーティストマネジメント、PR、音楽、映像制作などエンターテイメントに関連するサービスを提供するかたわら、「NY Japan CineFest」「j-Summit New York」などのイベントをプロデュース。その他にも、エイズ、3.11震災後の日本復興に関わるチャリティイベントや、平和、社会、環境問題などをテーマにしたプロジェクトにも積極的に取組んでいる。
ウェブサイト : www.marcreation.com / メール: contact@marcreation.com
「オンガク喫茶」のこぼれ話はブログ「ゼロからのレコードレーベル」

よみタイムVol.232 2014年6月20日発行号

続けることで本質に近づく
ぶれないこだわり
中村 照夫


 ジャズ・ベーシスト、プロデューサーの中村照夫が海を渡ってニューヨークに移住したのは半世紀前の1964年。日本人ミュージシャンの先駆者的な存在だ。
 日本人にジャズなんかできっこない、という偏見の中で、ベース一本で勝負し、頭角を現していった中村照夫は、いずれジャズの人名図鑑に名を連ねるようなミュージシャンたちと共演し、彼らをプロデュースするまでになった。
 そこには、スタンリー・タレンタイン、ジョージ・ベンソン、ロイ・ヘインズ、グローバー・ワシントン、ハービー・ハンコック、スティーブ・ガッド、ヘレン・メリルなど、数え切れないほどの淙々たる名前が並び、彼がプロデュースしたアルバムは実に60枚を越えた。
 70年代にはアルバム・タイトルにもなった「ライジングサン」というバンド名義で精力的に活動したが、1977年に発表した「マンハッタン・スペシャル」は25万枚近くを売上げ、音楽シーンに彼の名前は轟いた。その音楽的影響力はPMドーン、Jay-Zら数多くのヒップホップ・アーティストがサンプリングしていることからも容易に計り知ることができる。

 中村は、エイズ・チャリティなどの社会活動でも知られている。90年代にはニューヨークのタウンホールで、2009年にはマウント・フジ・ジャズフェスティバルをプロデュースした。
 「米国でも日本でも、エイズに関連するチャリティ・コンサートを何年もやったけど、それはコミュニケーションの一つだと思ってやっていた。つまり自分にとってはアート活動だったよ」
 そのコミュニケーションも、時代が目まぐるしく変化する中、テクノロジーの発展に伴い形を変えていく。例えば、昔は手紙や電話だったものが、今はスカイプやメールなどのインターネットやスマートフォンになった。しかし、中村は言う。
 「基本は何も変わっていない。人と人とが意思や思想を伝達し合っているだけ」
 「音楽も同じ。時代に取り残されない為に、常に新しいものに敏感でいる必要はあるけど、良い音楽を作り、演奏し、それをリスナーに聞かせるという伝達の基本は何一つ変わっていない」
 つまり50年という年月が経過し、人々の生活様式やテクノロジーも変わったが、中村照夫の音楽に対する執念にも近いこだわりや明確なヴィジョンは全くぶれていない。

 ライブシーンから暫く遠ざかっていたその彼が、再びベースを片手に、原点とも言えるグリニッッチ・ビレッジのステージに戻ってくる。
 「ここから俺はスタートしたし、ここでライブをやることは、とても大きな意味がある」と語る。
 「今年で70歳になるけど、ザ・ルーツとか若いヒップホップの奴らが、次々に俺の音楽をサンプリングしているのを見て、オリジナルを作った俺がそろそろ出て行ってライブをやってみるかって気になったんだよ」と鋭い眼光を放つ中村。
 「基本的なことを続けていれば、どんどん本質に近づく」
 水平線から浮かび上がる太陽のように、中村照夫が自身のライジングサン・バンドを引き連れ、本物のジャズを聴かせてくれる。
(河野洋)

中村照夫&ライジングサン・バンド
■6月24日(火) 8:00pm・9:30pm
■7月31日(木) 8:30pm・10:30pm
■会場: ZINC BAR
 82 W. 3rd St. (Bet. Thompson & Sullivan)
 TEL: 212-477-ZINC (9462)
■$15
www.zincbar.com